初回診断レポート サンプル(広告LP1本・短期検証)
広告費は増え、人も来た。問い合わせは0。
しかもその0が本物かどうかも、分からなかった
改修から13日。広告・GA4・ヒートマップの3つを突き合わせて分かったのは、「金が漏れている場所」と「人が止まっている場所」と「そもそも測れていない場所」が、それぞれ別だったことでした。
この期間のデータ規模は GA4セッション約80・ヒートマップ記録約50セッション・広告クリック約70。目安 n<300 を大きく下回るため、すべて参考値です。率の差は方向性の示唆にとどまり、統計的有意性はありません。
とくにフォーム関連のイベントは n=1 で、方向性の判断にすら使えません。「数字が足りないことを、足りないと書く」のも成果物の一部と考えています。
推奨アクション(結論)
レポートは「次に何をするか」から始めます。意思決定に必要な情報はこの章に集約し、裏付けは02章に主張番号で対応させています。疑わしいと感じた箇所だけ、02章で検証してください。まず13日間の全体像を6枚で:
(対象6要素すべて)
コンバージョン計測の3点セットを1週間以内に通す
実装担当根拠(要約):フォーム送信の専用イベントがGA4に0件(タグ未設定)、LP内にコンバージョン正本ページへのリンクが0本。コンバージョンがあっても数字にならない構造のまま13日が経過。→ 主張①
- タグマネージャでフォーム送信イベントをトリガー化し、GA4のイベント+キーイベントとして登録。LP識別子・フォーム設置位置をカスタムディメンションに登録する。
- MAツールのフォームハンドラの送信完了後リダイレクト先を、自サイトのコンバージョン正本ページに設定(MA管理者と連携)。これで計測経路が接続される。
- 上記キーイベントを広告側にインポート。広告のコンバージョンが0のままでは自動入札が学習できない(A2の前提条件)。
- MA/CRM側の実リード件数と、同期間のGA4数値を突合。「本当はコンバージョンが出ていたが計測できていなかった」のか「本当に0だったのか」を確定させる。
出血を止める
広告運用担当根拠(要約):平均クリック単価が約4.1倍で定着し、費用の約22%が同業他社の社名検索に流出。狙うべき意図の語には費用の約3%しか使えていない。→ 主張②
- 同業他社の社名を完全ブロック:表記ゆれ・英語表記・分割表記を含めてキャンペーン単位で一括除外(未除外の1語が現在も表示され続けている)。
- 費用の約50%を占めるグループのマッチタイプを絞る(流出の発生源)。フレーズ/完全一致中心に再編する。
- 入札戦略の暫定切替:A1完了までコンバージョンデータが存在せず「コンバージョン数の最大化」は機能しない。上限CPCを設定した「クリック数の最大化」または手動入札へ暫定変更し、単価を改修前水準に近づけて母数を確保する。
- 管理画面で変更履歴を目視確認し、CPC急騰の起点を確定させる(API経由では取得期間に制約がある)。
残りのアクション(A3〜A6)ダイジェストのため要約
| ID | 優先度 | アクション | 担当 |
|---|---|---|---|
| A3 | 今月中 | オファーを1段手前に増やす——料金は見るのに相談に進まない層へ、資料ダウンロード等の軽いオファーを新設。着手前に顧客の本音を掘る工程を挟み、いきなりコピーを書き始めない | コピー → デザイン → 実装 |
| A4 | 低コスト・即着手可 | 押せない要素へのクリックを解消する——見出し・料金表セル等に集中する「押せると思った」クリックを、リンク化またはスタイル統一で解消 | デザイン + 実装 |
| A5 | 今月中 | 計測データの衛生を整える——GA4・ヒートマップの内部トラフィック除外、n=1イベントの出所特定 | 分析担当 |
| A6 | 全体 | 次回の再測定条件を先に固定する——実配信20日以上・LP着地300セッション以上・曜日構成を揃える。それまでは代替KPI(CTAクリック/冒頭離脱率/CPC等)で進捗を見る | 分析担当 |
※実物のレポートでは、A3〜A6にも上のA1・A2と同じ粒度で「根拠の要約・手順・完了条件(何をもって完了とするか)」が付きます。
前回速報が最重要級として警告した「広告クリックの大幅減=流入の崩壊」への対策は、不要と判断して取り下げました。3ソースを突き合わせた結果、実態は「クリックの着地先がコラム記事からLPに集約された」だけで、LP着地はむしろ約5.3倍に増えていたためです(主張④)。誤読に基づく施策を1本止められたことも、この分析の成果に数えています。
根拠の展開 ── 主張ごとに、3つのデータを突き合わせる
ここからは01章の裏付けです。データソース別ではなく、主張別に並べます。1つの主張に対して広告・GA4・ヒートマップが同じ方向を指すか——それが根拠の強さです。あわせて、どこまでが事実で、どこからが推測かも主張ごとに明記します。このダイジェストでは主張③だけを実物の粒度のまま掲載し、残る4本は要旨に圧縮しています(実物では5本すべてが③の粒度です)。
ページ内の最も強いシグナルは「料金は見るが、相談には進まない」(→A3)
事実:ファネルの落ち方が場所を特定しています。落ちているのは「フォーム到達 → フォーム着手」の1段です:
※バー幅は視認性のため非線形。各段の数値は前段からの通過率です。
スクロールでは約26%がフォーム領域まで到達しているのに、CTAのクリックも送信ボタンのクリックも0。到達しているのに、手が動いていません。要素別に見ると対比は鮮明です:
| 要素 | リンク先 | クリック |
|---|---|---|
| 「料金・対応範囲を見る」(FV 第1CTA) | ページ内アンカー(料金) | 約30 |
| 「〇〇円〜でできるか相談する」(FV 第2CTA) | ページ内アンカー(フォーム) | 0 |
| ヘッダーの「無料相談」 | ページ内アンカー(フォーム) | 0 |
| 中間CTA「構成を確認してもらう」 | ページ内アンカー(フォーム) | 0 |
| 社内説明ブロック直下のCTA | ページ内アンカー(フォーム) | 0 |
| モバイル追従CTA「今すぐ相談する」 | ページ内アンカー(フォーム) | 0 |
| フォーム送信ボタン | 外部ドメインへPOST | 0 |
| フッターの「会社概要」 | コーポレートサイト(外部) | 2 |
| FAQ「社内稟議用の資料はもらえますか?」 | 開閉トグル | 1 |
仮説(推測):料金・対応範囲までは強い関心があるが、「30分の無料相談」というオファーが、この検討段階の対価に見合っていない。訪問者が実際に取りに行っているのは「社内説明用の資料」「サービスの適用単位の定義」「対応範囲」といった持ち帰り材料であり、有人相談より一段手前のオファーが空いています。
傍証(録画・クリックの突き合わせ):社内説明用ブロックの本文自体が上位のクリック集中箇所(リンクは直下のCTAにしかない)。FAQでは「社内稟議用の資料はもらえますか?」が開かれている。1時間以上滞在してFAQを全問開き、フォームに1文字も入れずに帰った訪問者の録画。9分以上滞在して唯一のクリックが「会社概要」=発注先として信頼できるかを確かめに行って、そのまま帰った訪問者(別セッションでも再現)。期待は既に「持ち帰れる材料」にあります。
どこまで確かか:クリック0の事実と到達26%は計測値。オファーの重さが原因という解釈は推測で、A3では本音発掘を挟んでから直します。
残りの主張(①②④⑤)ダイジェストのため要旨のみ
| 主張 | 要点 | どこまで確かか |
|---|---|---|
| ① | そもそもコンバージョンが計測できていない(→A1・A5)。フォーム送信の専用イベントがGA4に不在、LP内にコンバージョン正本ページへのリンクが0本。コンバージョンがあっても数字にならない構造のまま13日が経過。実物では「計測環境の棚卸し」10項目の一覧を添付 | イベント不在・リンク0本は、GA4設定とソースコードの両方で確認済みの事実 |
| ② | クリック単価が約4倍で定着し、費用の約22%が同業他社の社名に流出(→A2)。狙うべき意図の語は費用の約3%。インプレッションシェアの内訳から、単価急騰の主因は予算不足ではなく広告ランク(ランク損失 約57%)。コンバージョンゼロのまま「コンバージョン数の最大化」入札が稼働 | 単価・流出・シェア内訳は管理画面の事実。急騰の起点のみ変更履歴の残作業(未確定) |
| ④ | 前回速報の「流入が崩壊した」は覆った(→対策不要・取り下げ)。実態は着地先がコラム記事からLPへ集約されただけで、LP着地は12→64(約5.3倍)。1ソースだけ見た誤読を、3ソースの突き合わせで止めた | 着地構成の変化と捕捉率(約89%)は計測値で確定 |
| ⑤ | 6割が料金比較の入口までで離脱。押せない要素に「操作性への期待」が集中(→A4)。いらだち系の挙動(連打・即戻り)は0=UI破綻ではなく「期待とのズレ」で、低コストで直せる | 到達分布・クリック分布は計測値。直帰率の悪化は流入変化と交絡するため断定を回避 |
前回速報の指摘は、どうなったか(抜粋)
このLPは13日前に速報版を出しています。前回の読みが当たったか外れたかも、そのまま残します。分析は言い切って終わりではなく、次のデータで検証されるべきものと考えているためです。実物では全8項目を判定します(ここでは4つを抜粋):
データと事実(付録)── ダイジェストでは概要のみ
実物のレポートには、02章の論証が参照しているすべての数値を出典(どのツールの数字か)付きで一覧化した付録が付きます。この回の付録に入っているのは:
- 主要数値サマリ——改修前後の広告(表示・クリック・費用・CPC)/GA4(セッション・エンゲージ率・直帰率)/ヒートマップ(スクロール深度・離脱帯)を1表で対比
- 広告グループ別の内訳——費用の約50%を占めるグループが流出の発生源であることの特定
- 流入の質の比較——広告経由・直接流入・横断配信のエンゲージ率と滞在時間(「広告で連れてきた人より、自分で辿り着いた人のほうが読んでいる」)
- セッション録画の所見——録画リンクと「何を確認してほしいか」を添えて提示
- A/Bテストの成立状況——一方のバリアントが2セッションしかなく、「テストしているつもりで、テストになっていない」ことの明示
録画所見の例数値の裏取り。本サンプルでは所見のみ掲載
- 1時間以上読み込んで、フォームに1文字も入れずに帰った訪問者:FAQを1問ずつすべて開き、社内資料に関する設問もクリック。押せない箇所への繰り返しクリックも記録(→主張③)。
- 長時間滞在して、唯一のクリックが「会社概要」:9分以上滞在し、押したのはコーポレートサイトへのリンクだけ。別セッションでも再現(→主張③)。
このサンプルでお見せしている範囲
推奨アクションから始まる構成
レポートの先頭は要約ではなく「次に何をするか」です。優先度・担当・完了条件つきのアクションに、根拠の要約を添えて01章に置きます。忙しいときは01章だけ読めば意思決定できる構成です。誤読と分かった前回の対策を「取り下げる」判断も、結論として明記します。
主張別の論証(ソース別の羅列をしない)
広告(費用・検索語句・入札)、GA4(流入・行動・CV)、ヒートマップ(スクロール・クリック・録画)を、データソース別ではなく主張別に束ねて突き合わせます。1ソースだけでは「流入が崩壊した」のような誤読が起きます。
ソースコードとの対応づけ
「どこで離脱したか」をページのソースコードの行番号レベルで特定します。実装担当がそのまま着手できる粒度で渡すためです(本サンプルではセクション名で表記)。
前回の読みの検証
過去に出した仮説が当たったか外れたかを毎回明示します。外れた仮説は「覆った」と書きます。分析を積み上げるには、外れの記録が必要です。
数字の限界の明示
サンプルサイズが足りない、交絡している、取得できない項目がある——これらを隠さず書きます。各主張に「どこまで確かか」を添え、「n=1では判断材料に使わない」と明記することも成果物です。
優先度・担当・完了条件
課題の列挙で終わらせず、誰が何をして、何をもって完了とするかまで指定します。検証方法を先に決めるのが前提です。
計測環境の棚卸し
分析の副産物として「そもそも測れていない項目」を洗い出します。この回では、それが最優先アクションとして浮上しました。
本ページは広告LP 1本に絞って、短期の改修効果を検証した速報型のサンプル(初回診断に相当)です。サイト全体を毎月定点観測する「定期レポート」のサンプルは、こちらからご覧いただけます。前回の指摘がその後どうなったか——本レポートで挙げた課題の追跡結果も、そちらに載せています。
なお本サンプルの初回診断は、短期の広告検証に論点を絞っているため、自然検索(Search Console)を除く3ソースで構成しています。サイト全体の定期レポートは4ソースで提供します。
自社サイトでも、こうやって数字を見ています
このサンプルは架空の企業を題材にしていますが、当社は自社の広告LPにも毎回この形式でレポートを出しています。同じ形式のレポートを、お客様のサイト・広告アカウントに対してお届けします。まずは現状の整理からご一緒します。
注記
- 本ページは公開用サンプル(ダイジェスト)です。架空の企業「A社」を題材にしたもので、数値・社名・キーワード・録画の内容はすべて架空です。章構成・分析の手順・記述の粒度は実際の納品物と同じですが、分量は実物の約半分に要約しています。
- すべての率は n<300 の参考値です。この回はページ改修・広告改善・着地ページの集約が同日に発生しており、単一要因への切り分けは不可能でした。切り分けできないことも、そのまま書くのが原則です。
- 本サンプル内で「推測」と記した箇所は、データから直接は言えない解釈です。各主張に「どこまで確かか」を添え、事実と推測を分けて書くことを原則としています。仮説の採否と施策の実行判断は、AIではなく人が行います。
