まだ「AWSは海外だから」と心配しますか?法務部を説得するデータ国内完結と法令の真実

「AWS、便利そうだけどアメリカの企業でしょ? 日本の法律は守れるの?」

クラウド導入を提案したとき、上司や法務部門からこんなツッコミを受けて、答えに詰まってしまった経験はありませんか?
「データが勝手に海外へ持ち出される」「何かあったらアメリカの裁判所に行かなきゃいけない」……そんな不安の声でプロジェクトがストップしてしまうのは、非常にもったいない話です。

結論から言います。その懸念は、ほとんどが「誤解」です。

AWS(Amazon Web Services)は世界的なプラットフォームですが、実は「日本国内でデータを完結」させ、「日本の法律で契約」できる仕組みが確立されています。

本記事では、社内の「漠然とした不安」を払拭するための決定的なファクト(事実)を解説します。これを読めば、自信を持ってAWS導入を進められるはずです。

誤解の正体:「海外企業=日本の法令が適用されない」という不安

「外資系クラウドを使うと、日本の法律で守られない」「トラブルが起きたら海外の裁判所で争うことになる」
こうした不安はクラウド黎明期から根強くありますが、現在のAWSにおいては実態と大きくかけ離れています。まずは、よくある誤解を解いていきましょう。

「データが勝手に海外へ持ち出される」というイメージ

「クラウド(雲)」という言葉の響きから、「データが空中にふわふわ浮いていて、世界のどこにあるか分からない」というイメージを持つ方がいます。しかし、クラウドといえども魔法ではありません。実体は、物理的なデータセンターにあるサーバーです。

「海外企業が運営している」=「データも海外にある」と直結させて考えるのは早計です。
AWSのような巨大なクラウド事業者は世界各国に拠点を持ち、物理的なインフラを厳格に管理しています。管理している会社が海外企業であっても、データの物理的な保管場所まで強制的に海外になるわけではありません。

この「運営している会社」と「データを置く場所」を混同していることが、不安の根本的な原因なのです。

米国クラウド法(CLOUD Act)は「何でも見られる法律」ではない

AWSを利用する際によく議論になるのが、2018年に成立した米国の「CLOUD Act(クラウド法)」です。「米国政府が令状なしにいつでも日本企業のデータを覗き見できる法律だ」という極端な噂を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、これは正確ではありません。
CLOUD Actは、重大な犯罪捜査において、適正な法的手続き(令状の発行など)を経た場合に限り、事業者にデータの開示を求めることができる枠組みです。無制限にデータが見られるわけではなく、日本国内の法律や二国間の協定とも調整が必要です。

AWS自身も、顧客データを守るための厳格なポリシーを持っています。政府からの要求であっても、不当なものであれば断固として異議を申し立てる姿勢を明確にしているのです。

つまり、「AWSを使う = 機密情報が筒抜けになる」という図式は成り立ちません。
映画やドラマのように、政府がボタン一つですべてを監視できる……というのはフィクションの世界の話。ビジネスにおけるリスク評価としては、明らかに「考えすぎ(過剰)」と言えるでしょう。

契約は「日本法」、裁判所は「東京」でOK

「契約トラブルがあったとき、アメリカの法律で裁かれるのではないか」という点も大きな懸念材料ですが、これも事実を確認すれば安心できます。

現在、日本国内に拠点を持つ法人がAWSと契約する場合、準拠法は「日本法」、紛争時の管轄裁判所は「東京地方裁判所」と規定されています(※一般的なAWSカスタマーアグリーメントの場合)。

つまり、日本の企業が日本でAWSを利用する限り、日本の法律に基づいて契約が解釈され、国内で裁判を行うことが可能です。「海外企業だから日本の法律が通じない」という前提自体が、今の契約実態とは異なっているのです。

事実:東京・大阪リージョンならデータは「日本国内」から出ない

法的な懸念の次に問題となるのが「データの物理的な場所」です。AWSには「リージョン」という概念があり、これを正しく理解すれば、データが意図せず国境を越えることはないとわかります。

場所を決めるのはAWSではなく「あなた」

AWSは世界中に「リージョン(Region)」と呼ばれるデータセンターの集積地を展開しています。ここで重要なのは、どのリージョンを使うかを決めるのはAWSではなく「ユーザー自身」であるという点です。

AWSのアカウントを作ったからといって、データが勝手に世界中にバラまかれるわけではありません。システムを作るとき、管理画面で「東京リージョン」や「大阪リージョン」などを自分で選んで利用を開始します。
つまり、データの保存場所の決定権は、常に利用者の手元にあるのです。

「東京・大阪」を選べば、物理的に国内完結する

日本国内には「東京リージョン」と「大阪リージョン」の2つが存在します。これらを選んでシステムを構築すれば、顧客データや業務データは物理的に日本国内のデータセンターに保存されます。

これにより、「国内のサーバーに情報を保管しなければならない」という社内規定や、特定の業界ガイドラインをクリアできます。海外のサーバーを経由することなく、国内だけでデータの処理・保存を完結させることが、AWSの標準機能として可能なのです。

許可しない限り、データは他国へ移動しない

AWSは、「ユーザーが選択したリージョンから、ユーザーの許可なくデータを他??のリージョンへ移動させることはない」と明言しています。

例えば、災害対策(バックアップ)のために東京から海外へデータを転送したい場合は、ユーザー自身がそのような設定を行わなければなりません。逆に言えば、そうした設定をしない限り、東京リージョンに置いたデータが勝手に米国リージョンへコピーされることはシステム上あり得ないのです。

この仕組みにより、データの主権を完全に自社でコントロールできます。

実績:政府も銀行も使っている「お墨付き」の安全性

「理屈はわかった。でも、本当に日本の厳しい規制に対応できているの?」
そんな疑問に対しては、すでに多くの実績が答えを出しています。政府機関や金融機関など、日本で最もセキュリティにうるさい組織がAWSを採用しているのです。

日本政府のセキュリティ評価「ISMAP」に登録済み

日本政府がクラウドサービスを調達する際のセキュリティ基準として、「ISMAP(イスマップ)」という制度があります。AWSは、このISMAPに登録されたクラウドサービスリストに含まれています。

これはどういうことかと言うと、「日本政府が求める厳しいセキュリティ基準をAWSが満たしている」と、国が認めたということです。デジタル庁をはじめとする官公庁のシステムや、自治体の基盤としてAWSが採用されている事実は、日本の法令・基準への適合性を裏付ける強力な証拠と言えるでしょう。

金融・医療分野でも「当たり前」に使われている

法令遵守が特に厳しく求められる金融・医療業界でも、AWSはすでにスタンダードになりつつあります。

  • 金融業界:メガバンクや大手保険会社が、FISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準に対応した基幹システムをAWSで稼働させています。
  • 医療業界:厚生労働省などの「3省2ガイドライン」に対応し、電子カルテや医療画像の保管場所として多くの病院や製薬会社で利用されています。

個人情報保護法やマイナンバー法も問題なし

日本の「個人情報保護法」や「マイナンバー法」においても、AWSを利用することは法的に問題ありません。

改正個人情報保護法では、外国にある第三者へ個人データを提供する際の制限がありますが、前述の通り国内リージョンを利用すればデータは国内に留まるため、実務上のハードルは大きく下がります。
AWSは日本企業がコンプライアンスを遵守しながら利用できる環境を整えているのです。

結論:セキュリティは「クラウドか否か」ではなく「設計」で決まる

ここまで見てきた通り、AWSというプラットフォーム自体に法的な危険性はありません。むしろ重要なのは、「AWSをどう使うか」という利用者の設計です。

「頑丈な家」と「鍵かけ」の関係(責任共有モデル)

AWSのセキュリティを語る上で欠かせないのが「責任共有モデル」です。少し難しい言葉ですが、「家と鍵」の関係で考えるとわかりやすくなります。

  • AWSの責任(家そのもの)
    AWSは、極めて頑丈で、警備員が24時間監視している「建物(データセンター)」や「ネットワーク」を提供します。ここはAWSが責任を持って守ります。
  • 利用者の責任(部屋の鍵)
    その頑丈な建物の中で、借りた部屋(サーバー)の「鍵をかける(パスワード設定)」「誰を入れるか決める(アクセス権限)」のは、利用者であるあなたの責任です。

どんなにセキュリティが強固なマンションでも、住人が玄関の鍵を開けっ放しにしていたら泥棒に入られてしまいますよね?
情報漏洩の多くは、クラウド事業者の不備ではなく、この「鍵のかけ忘れ(設定ミス)」から発生しています。

「AWSを使っているから安全」なのではなく、「AWSという頑丈な土台の上で、自社が適切に鍵をかけるから安全」なのです。

暗号化してしまえば、AWS社員でも中身は見られない

データの主権をより強固にするために、AWSには高度な暗号化機能があります。
データを暗号化し、その「復号するための鍵」を自社で管理してしまえば、たとえAWSのエンジニアであってもデータの中身を見ることは技術的に不可能になります。

また、「誰が」「いつ」「どのデータに」アクセスできるかを細かく設定することで、意図しないデータの持ち出しを技術的に防ぐことも可能です。

結局のところ、日本の法令を守れるかどうかは、クラウドがどこの国の会社かということよりも、「要件に合わせて正しく設計・運用できているか」にかかっているのです。

まとめ:場所を選べるAWSなら、法務部の説得は十分に可能

「AWSは海外企業だから心配」という懸念は、データの所在や契約の実態を知ることで、その多くが誤解であると分かります。

最後に、上司や法務部門を説得するためのポイントを整理します。

  1. データは国内完結:東京・大阪リージョンを選べば、データは物理的に日本から出ない。
  2. 契約は日本法:準拠法は日本法、裁判所は東京地裁。日本の法律で守られる。
  3. 政府認定の実績:デジタル庁やメガバンクも採用しており、ISMAP(政府認定)も取得済み。
  4. 自社で制御可能:暗号化やアクセス権限は自社でコントロールでき、勝手に見られることはない。

「外資系=危険」というイメージだけで選択肢から外すことは、ビジネスのスピードや拡張性を損なう大きな機会損失です。
イメージではなく、機能と契約内容という「事実」に基づいて、ぜひクラウド活用への一歩を踏み出してください。

AWSへの移行にお困りの場合は、ディーネットまでお問い合わせください。お客様に最適な運用をご提案し代行いたします。