センサーデータの可視化で故障予兆の検知を支援。予防保全の仕組みづくりをサポート

株式会社三井三池製作所様(以下、三井三池製作所様)は大型工業機械のセンサーデータ可視化システムを自社開発していましたが、表示速度の改善といった技術課題への対応と、社内担当者の異動における後継者不在という課題に直面。
この課題を解決するために、社内エンジニアの増員ではなくAWS専門ベンダーへのアウトソースを決断します。 その判断に至った経緯や、実際にディーネットのIoT開発支援サービスを利用してみての効果を、運搬機械設計グループ所属の前田様にお伺いしました。

  • AWSサポートのアドバイスを社内に落とし込む難易度が向上
  • 社内開発リソースの確保
  • スピード感を持った開発
  • 課題であったパフォーマンスに関する問題の解消
  • IoT開発支援のアウトソースによるリソース不足の解消
  • スピード感をもった開発体制の確立

三井三池製作所様は、1882年創業、140年以上の歴史を持つ老舗製造業企業です。
炭鉱での石炭掘削機械の製作に始まり、時代の変化とともに長年にわたりインフラ向け機械メーカーとして業界をリードしてきました。同社が抱えていた課題とは?

御社の事業と抱えていた課題についてお教えください

三井三池製作所は、三池炭鉱発祥の企業です。
もとは石炭鉱山を掘削する機械、掘削した石炭を運搬する機械などの製造やメンテナンスを行う部門が独立して今の三井三池製作所になりました。 現在は運搬設備、プラント設備、小水力発電設備(小さめのダムで発電をするための水車やモーター、発電機)、トンネル関係の掘削機械、モーター、減速機の製造、ステンレスプールの製造、プレス機による自動車部品の製造が主な事業です。

わたしの所属する運搬機械設計グループでは、石炭や鉱石を運搬する移動機と呼ばれる機械を設計・製造しています。移動機が故障してしまうと、お客様の仕事が長時間停止することになり、大きな機会損失が発生するという課題を抱えています。その機会損失を少しでも軽減させるために、お客様にて交換部品の確保や現地での修理体制を確保することで、停止時間の短縮を目指すのが従来のやり方です。同じ1時間の停止でも、事前計画されたものと、突発的に発生されたものでは、影響が大きく異なります。我々、機械を製造する立場としては、故障してから対処するのではなく、事前に故障の予兆を検知しオーバーホールの計画を組み込む予防保全につなげていきたいと考えていました。

そこで、センサーデータとIoT技術による故障予兆検知システムの開発に至ったということでしたね。具体的にどのようなシステムだったのでしょうか?

監視対象となる移動機に振動計やひずみゲージ、ボルトの軸力計などのセンサーを取り付けます。それらのセンサー情報と、PLC(産業用制御機器)から取得した移動機の制御情報をAWS上に集約していきます。集約したデータを分析することで、遠隔での監視を可能にし、予防保全と故障予兆に利用するというものになります。
お客様自身がセンサーの設置を希望され、独自にセンサーデータを取得・管理しているというケースも増えてきていますが、アラート検知の閾値の正確性や、点検実施のリソース確保などといった課題もありました。
しかし、三井三池製作所で故障予兆検知システムにこのセンサーデータを活用するようになると、三井三池製作所側でのアラート検知時に、お客様側で持っているデータも併せて照らし合わせることで、故障原因や発生時期などの原因究明に役立ちます。

このIoTシステムの自社開発も技術的な壁にぶつかったとお聞きしました。

そうですね。センサーデータの取得・蓄積・表示までのシステム開発は、AWSサポートを利用しながら自社で開発していました。まずは動くものを作る、というフェーズでは問題なく進んでいたのですが、徐々にシステムが高度化していきました。
たとえば、収集した情報を可視化する部分で、性能の問題が発生したことがあります。AWSサポートにアドバイスをもらってはいたのですが、その内容を実装に落とし込むのに時間がかかるなど、社内の落とし込みに課題を感じるようになっていきました。
時間をかければなんとかなりそうだったのですが、社内では商品化に対してスピード感も重要視されていましたこともあり、「AWSに関する専門的な知識をもとにスピード感を維持して開発する」という部分が課題になっていきました。

自社開発の限界から、専門知識の補充とシステム性能向上を目的としてアウトソースに舵を切った三井三池製作所様。委託先の選定基準とは?

アウトソース先の選定で重視していたことはありますか?

特殊な機械のセンサーデータを扱うため、まずはシステムの理解力を重視していました。
AWSのパートナーが一堂に集まるAWS Summit で複数の大手ベンダーと面談しましたが、多くの企業がそもそものシステム理解に苦戦していたように思います。
その中で、具体的で的確なアドバイスをもらえるかどうかを重視して選定しました。

ディーネットとの打ち合わせでは、どのような印象を持ちましたか?

エンジニアの大向井さんが最初のMTGから参加してくださり、理解の速さとアドバイスの的確さが他社と比較して非常に優れていました。特殊なデータの処理についても、当初から具体的な提案をいただけました。
また、AWSサポートからのアドバイスとディーネットさんの提案内容が近しいものだったことも、安心感に繋がりました。ベストプラクティスの話だけでなく、私たちの環境に最適な解決策まで踏み込んで提案してくれたこともありがたかったです。

ディーネットのIoT開発支援を導入いただき、実際に利用してみてはじめてわかることも多くあります。前田様が導入前後で感じたサービスの効果とは?

実際に導入してみていかがでしたか?

課題だったパフォーマンス部分が無事に解決し、データ取得し蓄積、閲覧するモニタリングの部分を完成させることができました。システムのベースとなる部分ができたといえます。

今後の展開についてお教えください

現在は、本格的に予防保全につながる故障予兆の検知部分の開発に取り組んでいるところです。業界的に人手不足で機械のメンテナンスまで手が回っていないお客様が多くいます。メーカーとして、効果的なメンテナンスで長期間にわたり安全な機械を提供していければと考えています。

サービスご利用の満足度をお教えください

技術的な限界を感じていた部分をディーネットさんが補ってくれたおかげで、非常に満足しています。単なるシステム構築だけでなく、私たちの事業を理解した上での継続的なサポートにより、安心してシステム運用を続けることができています。

今後のAWS活用に関する展望や、ディーネットに期待することをお聞かせください

本格的に予防保全に活かしていくことが目下の目標です。
モニタリングの枠を超えて、社内の監視チームでアラートを検知した段階で、必要な対応を能動的に提案していくという、「継続的な保守サービス提供」へのビジネスモデルの展開を目指しています。
そのために、今後も引き続き、ディーネットさんの専門的なサポートを期待しています。

株式会社三井三池製作所は、三池炭鉱から発展した140年を超える歴史を持つ老舗製造業企業です。時代の流れとともに、長年にわたりインフラ向け機械メーカーとして業界をリードしてきました。
現在は運搬設備、プラント設備、小水力発電設備、モーター等の製造を主な事業とし、近年では再生可能エネルギー分野にも事業展開することで、脱炭素社会に向けた取り組みも行っています。

ご利用いただいたサービス

三井三池製作所様の故障予兆検知システムの開発においてAWS活用に向けたコンサルティングや実導入作業をご担当いたしました。 この度は大変嬉しいお言葉を賜りまして心より感謝申し上げます。 導入にあたっては実現したい内容に対してパフォーマンスやコストやセキュリティなど多様な面から検討を行い、 共に協議しながら最適なかたちを目指すことでミスマッチを抑えてシステム化を実現できたと認識しております。 引き続き故障予兆の検知部分をはじめ、システムの改良や最適化のために共に協力しあって進めていけたらと考えております。 尽力してサポートしてまいりますので今後ともよろしくお願いいたします。

担当エンジニア: 大向井 (技術ブログ https://blog.denet.co.jp/archive/28/